もっと美味しい時間  

1時間かかると思っていた仕事も早めに終わることが出来ると、高垣課長に提出した。

「安川工務店の書類、終わりました。確認印お願いします」

「ご苦労さん。後で見ておくから、今日はもう上がっていいぞ」

「はいっ。お疲れ様です」

ほっと一息つくと、寺澤くんに近づく。

「もう終わりそう? 何か手伝おうか?」

「おぅ藤野。じゃあ、お言葉に甘えて。これ、ファイリング頼める?」

「了解っ」

丁寧に仕上がっている仕事に感心しながら、手早くファイリングする。その間に、寺澤くんも仕事を終えていた。
出来上がったファイルを渡すと、ほぅ~と感嘆の声をあげる。

「何?」

「いや。さすがは藤野。キレイにファイリングしてあるなぁ~と思って」

「そう? 誰にでも出来る事でしょ?」

「俺、こう言うの苦手なんだよね。これからは毎回藤野に頼もうかなぁ」

「報酬有りなら手伝うけど?」

「えぇ~っ」

わざとらしくがっくり項垂れる寺澤くんを横目に、帰る支度を整える。
あまり長い時間、美和先輩を待てせておくのは申し訳ない。バッグを持つと、寺澤くんに声をかけた。

「美和先輩と一緒に下に行くから、寺澤くんも早く用意して来てね」

「おうっ!」

まだ残っている課の人にも挨拶をしてフロアを出ると、美和先輩のところへと急いだ。
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