【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
ギッと紀之さんを見据えると、それまでの余裕が一瞬消えるのを感じた。

まさかあたしがこんなにも激しく言い返すとは思っていなかったのか、彼は明らかに動揺したようだ。

「…お前、見かけよりキツイな。
俺がいつでもお前を襲える状態だってのに、そんな風に逆らって悪態ついて、もし俺が逆上でもしたらこのまま乱暴されてもおかしくないんだぞ? 怖くないのか?」

「乱暴されるのは怖い。でもあなたは怖くない」

声が震えないようにと、全神経を集中させて言った台詞は、自分で思った以上に凛と響いた。

紀之さんは目を見開いて探るようにあたしを見つめる。

彼の瞳には迷いが浮かんでいて、とても暗くて哀しげだった。

あたしを見ているのに、まるであたしを映していない。

あたしを通して誰かを見ているようにも感じた。


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