【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
おばあちゃんは言葉を切って紅茶を口に運び、暫し黙り込んだ。
ひとつの真実を知るたび、その内容の重さに胸が痛む。
いつも微笑んでいる優しいおばあちゃんの、こんなに厳しい顔は見たことが無かった。
きっと長い間ずっと心の奥底に閉じ込めていたことだけに、言葉にすることが難しいのだと思う。
何かを言いかけてはやめ、言葉を捜すように考え込む。
そんな仕草を繰り返しては、ポツリポツリと話す姿は、とても小さく見えた。
「年を取ると忘れっぽくなるけれど、忘れたい事はどうしても忘れられないの。
いっそ忘れることが出来たらどんなに楽だったか…。
親なのに、俊弥を助けてやることも、苦しみを受け止めてやる事もできなかった。
私に出来ることは、俊弥が最後まで望んだこと。香織が俊弥の娘である事実を隠すことだけだったわ。
香織は典香の娘として引き取られることになったけれど、私は典香にすら兄が香織を残していった本当の理由を告げることが出来なかった。
真実など知らないほうが、香織を幸せにしてくれるような気がしたのよ。
だから典香と祐成さんには、俊弥は知人の保証人になって多額の借金を背負った為に香織を育てることが出来なくなったのだと、嘘をついたの。…ごめんなさい」
おばあちゃんはパパとママを申し訳なさそうに見た。
ママは首をゆっくりと横に振っておばあちゃんの肩を抱いた。