【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
だが、一族に潜り込んだとき初めて、失ったと思っていた小さな命が、仮死状態から奇跡的に一命を取りとめ、瀬名家の養女になったことを知った。
あの時、百合絵の腕の中で死んだと思っていた我が子は生きていたのだ。
百合子と名づけられた娘は、百合絵に生き写しだった。
嬉しかった。
だが同時に、百合絵の忘れ形見が一族の手にある事実に愕然とした。
百合絵の最後の望みは香織を一族の手から離し、幸せにすることだった。
もしも百合絵があの子の無事を知ったら、きっと香織に望んだと同じ事を百合子にも望んだはずだ。
この巨大な鳥かごから愛する娘を逃がさなければ、百合絵は安らかに眠れない。…そう思った。
俺は、それまで以上に任務をこなし、着実に春日での信頼を得ていった。
闇に封印するような汚い仕事も顔色一つ変えずにこなしていく事で、短期間に力と信頼を得ることに成功した。
その冷酷さを買われ、暗殺集団『魁鬼』の一人にまで抜擢されるようになり、春日での信頼を不動のものとしていった。