聖なる夜の贈り物
聖なる夜の贈り物1
むかしむかし ある小さな国の小さな村での出来事です。

今夜はクリスマス

あまり裕福な村ではありませんが、どこの家もクリスマスの飾りつけで輝いていました。           .

でも一軒だけ何の飾り付けもなくいつもと変わらない夜を過ごしている家族がいました。

その家の台所では小さな男の子が、お母さんの変わりに夕食の支度をしていました。

お父さんは、もう何日も前から病気で寝込んでいるのです。

お母さんは、お父さんの分も一生懸命働いたので過労で倒れてしまいました。

今年はプレゼントもケーキもありません。

男の子は、スープを作ってお母さんに、そしてお父さんに食べさせてあげました。

『ごめんね。わたしが元気だったら、去年みたいに楽しいクリスマスだったのにね』

『今年は、プレゼントがなくてごめんよ』

お父さんもお母さんも、たったひとりの男の子のことを哀れに思いました。

『僕・・・プレゼントなんかいらないよ!』

男の子は小さな手でお父さんとお母さんの手をしっかり握りました。

去年のクリスマス・・・・とても楽しかった。

天国へいったお婆さんと4人で祝った最後のクリスマス。

3年前のお爺さんと5人で祝ったクリスマス。

楽しかったクリスマスをひとつひとつ思い出しながらうとうとしていました。

外は雪が降りはじめていましたが、暖炉の火は小さくなって燃え尽きようとしています。

外にはもう燃やせる薪がありません。小さな男の子には薪を割ることが出来ないのです。

それでも 男の子は外へ出て薪を割ろうとしました。でも うまく割れません。

悴んだ手は感覚がなくなってきていました。隣の家からは、笑い声が聞こえてきます。

男の子は諦めて家に入ると暖炉の火はもう消えていました。

このままでは寒くてお父さんとお母さんの病気が悪くなってしまうし、

明日の食事を作る事もできません。

そんなとき静かに眠っているお父さんとお母さんの寝顔を見ながら閃いたのです。

男の子には宝物がありました。それはたくさんの本です。

クリスマスや誕生日に、お父さんとお母さん お爺さんやお婆さんからもらったいくつもの本。

今、その宝物を燃やそうとしているのです。寒さを凌ぐには、それしかありません。

一冊の本を手に取ると一頁ずつ破いて火を点けました。

それはお爺さんからもらった絵本。

お婆さんからもらった本。お父さん、お母さんからもらった・・・・

まるで思い出が消されていくような思いでした。

そして、とうとう大切な聖書までも・・・。

その夜、男の子は夢を見ました。
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