スクランブル・ジャックin渋谷
宏、拳銃を持つ右手が震えている。怯えている。

組長「どうした、手が震えているぞ。人を撃ったことがないのかい?」

宏「ちち、近づくと、撃つぞ…。ああ、当たったら、痛い目にあうぞ…」
 言葉が震えている。

 組長、薄笑いしながら突進する。
 宏は、目を閉じて叫んだ。引き金を引いた。

宏「うわーっ!」

 その銃口から、「水」が放出された。水鉄砲だ。組長の目に、水が命中した。

 両手で目を押さえる、組長。とても痛がっている。激痛だ。

組長「いてーっ。ワー、何をかけたーっ?」

 組長、叫びながら路面を転げまわる。のた打ち回っている。

 宏は、右手に拳銃を持って笑っている。銃口に残っている水を、ペロリとなめる。

宏「ハハハ。これはレモン水じゃ。だから言っただろう、痛い目にあうって。ハハハ…」

 人差し指で、拳銃をクルクルと回転させる。腰ベルトに、カッコ良くしまおうとする。

決めるつもりだったが、手元が滑って、拳銃は地面に落ちてしまった。

 宏、周囲を見回しながら、慌てて拳銃を拾って腰ベルトにしまう。

 ハチ公前広場の観衆たちは、何も言わないが、しっかり見ていた。
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