スクランブル・ジャックin渋谷
周囲の通行人も、光りに包まれた。まばゆいばかりの閃光は、交差点全体を包み込んだ。

ハチ公が光りに包まれた。人型信号機も包まれた。
9台の公衆電話、露天の本屋も包まれた。
駅前ビルのマネキン4体が、光りに包まれた。

「ふれあいマップ」の看板下で、飲んだ暮れる6人のホームレスも包まれた。
渋谷駅、隣接するスーパー渋谷が包まれた。

光りに包まれる、2基のモニターAとB。
通りのビル全体をも、包み込んだ。

交差点を中心に、半径約200メートル付近が、白い光りによって、街が飲み込まれてしまうのであった。

彗星は、交差点に衝突したもの、何もなかったかのように、そのまま消え去ってしまった。

爆発することもない、クレーターが発生することもない。粉塵を上空に上げることもない。

彗星は、跡形もなく消えたようだ。

交差点の中央に、宏が呆然として突っ立っている。
光りは、いつしか消え去っている。

平穏な渋谷の街並みに、戻っている。
人型信号機が、青から赤に変わっている。

宏は、フと我に返った。周囲を見渡すと、通行人は1人もいない。
自動車も、走っていない。交差点には、宏1人だけが立っている。

からっ風が吹きすさび、静寂が漂う。
モニタービルAから、渋谷の街を紹介するCMが流れている。

自動車は、交差点の外で停車している。
人々は、歩道上で立ち尽くしている。黙って、宏を見ている。

呆然と立ち尽くしている、宏。自分の頬をつねる。とても痛い。夢ではなく、現実のようだ。

あの閃光は、何だったのだ?
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