虹になる日がきたら
厄日だな!
「1」
今思えばあの日は前日からついてなかった。
前日、久し振りに会った高校の時の友人と飲みに行ったら二日酔いで記憶がない。
それどころか知らない高級ホテルに寝てた。
それも裸で。
慌てて周りを見渡しても人が居ない。
ダッシュで逃げ出し家に帰りバスルームに駆け込んだら洗顔と歯磨き粉を間違えリバース、着替えてたらストッキングは伝線、いざ、会社に行こうと外に出たらどしゃ降りの雨で下ろし立てのスーツには泥が付き、挙げ句の果てにはヒールが溝にはまり折れた。
「厄日だな」
会社にやっとの事で着いた私に友人、永峰七子の冷た~い一言で終わった。
「まぁ、そんなの序ノ口じゃん?これからもっと恐ろしい事が待ってるんだよ♪所で?そんなスイートに泊まる男と何したの?」
にやけながらエレベーターを待っていた。
「普通慰めないかなぁ?ってか全く覚えてないのよね」
「慰めないよ♪楽しいよね美玲って!まずはその酒臭さを抜いてきな話はその後」
女王気質の彼女
周りの人達は“何でこの2人?”って言う目で視てくる。
確かに美人で頭、器量共に良しの七子に対して私は分厚い眼鏡にマッシュルームみたいな頭(桂)に超ナチュラルメイク
一緒に居るのがマジ不思議だね。
私の素を知ってて一緒に居てくれて、気持ちを解ってくれる人間は七子だけだよ。
項垂れながらトイレに行き、戻ってきて自分のデスク見てこれ又落胆。
有り得ないファイルの山
一番上には付箋が付いてて“今日中にやっといて?”
最初は低姿勢で頼んで来たのに最近では脅しに近い。
犯人はわかってる。
だから毎回ランチ後に七子が本人の元(ロッカーとかデスクの下とか)に戻してる
戻したのバレてるのに毎日出してくるからスゴイ!
毎日毎日変わらない日常
始業のベルが鳴り週一の朝礼が始まり重要な所だけ聞いていたら
「鞍橋君ちょっと?」
人に注目を浴びるのは苦手だ。
周りは笑う者と無関係という者と七子
「えぇ〜、知ってると思うけど先月末NY支社から社長のご子息が戻られた」
噂では超我が儘坊っちゃんだとか?
「そのご子息、一寿様が今日からこの会社に来るそうだ」
それと私とどんな関係が?
「鞍橋君には彼の秘書をお願いしたい。一寿様たっての希望だ」
辺りが騒然とした。
あちらでは“何で?”
それちらでは“弱味でも握ったのかしら?”
凄い言われようだ。
面識の無い人間の弱味をどうやって掴めっての!!
その前に頭の悪い会話嫌いだよ。