さよならでも愛おしい

 酷く傲慢で幼稚な願い。

 俺と別れたことで幸せになって欲しい。

 笑っていてと願う。

 俺の前で泣かないで。

 君を愛しいと、思ってしまうから。

 体を震わせた彼女は俺の体に腕を回し、俺を抱きしめた。

 「…ごめん、直樹。ごめんね」

 泣きじゃくる彼女の細い体、震える彼女から逃げ出すように俺はその場を去った。

 
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