運命みたいに恋してる。
運命なんて恐れない
大地のおかげで迷うことなく順調に梅の間にたどり着いたあたしは、うまく隣の部屋に忍び込むことができた。


そして襖に耳を当てて、梅の間の様子を探っているんだけど……。


おっかしいな? さっきからなんにも聞こえない。


大地も同じように襖に耳を当ててみたけど、やっぱり聞こえないみたいだ。


「場所、聞き間違えたんじゃねえのか?」


「えー? たしかに梅の間って言ってたよ?」


「しー。あんまり大きな声を出すなよ。俺らは盗み聞きしてんだから」


大地が口もとに人差し指を当てて注意したけど、心配ないと思う。


向こうの声が聞こえないんなら、こっちの声も向こうに聞こえないはず。


「最近の襖の防音性能ってすごいんだね」


「単純に話し合いが決裂して、みんな不機嫌になって黙り込んでるだけだったりしてな」


冗談を言って笑う大地に、あたしも笑って返した。


「まっさか。いい大人が揃いも揃って、そんな子どものケンカみたいなみっともないことしないでしょ」


「だよな。さすがにそんな生産性ゼロな真似はしないよな」


あたしと大地は声を揃えて笑い、そのまま畳の上に並んで座り込んだ。


あーあ。せっかく意気込んでここまで来たのに、襖に阻まれるとは思わなかった。


やっぱり世の中って思い通りにいかないや。


「これからどうしよう。なんか疲れたよ」


大きなため息をついたら、大地もしみじみと同意してくれた。


「あんまり子どもに心配かけないで欲しいよな」
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