運命みたいに恋してる。
それからはもう、カフェの運営とか、お姉ちゃんの体調管理とか、手出し口出し好き放題。


実にイキイキと干渉しまくってる。


つまり双方、妥協点を見つけて落ち着く所に収まったんだね。


それでうまく回ってるなら、それでいいと思う。


「いいって言ったってなあ……。お前の母さんの今度の新メニューは、俺はどうかと思うけどな」


あたしの隣を歩く大地が、なんとも複雑そうな声でそう言った。


大地とふたり、学校帰りに肩を並べてカフェまで歩くこの時間が、最近のあたしの一番の幸せタイム。


自分の隣に大地がいることが嬉しくて、ふたりの間の微妙な距離が、妙にくすぐったい。


大地の声とか、なにげない仕草にキュンキュンしたり、ソワソワしたり、幸せなんだ。


街路樹の緑がすごく新鮮に見えるし、道路脇の花とか、日差しの明るさとか、日常のいろんな物が、魔法のようにキラキラして見える。


あたしって、恋しちゃってるなあ。


しみじみと湧き上がる幸せを感じながら、あたしは答えた。


「今度のお母さんの新メニュー? サバの味噌煮と、ふろふき大根と、ひじきの煮物のこと?」


「うちはカフェだぞ? どう考えても方向性が違うだろ。お前の母さんって、どこ目指してんだよ?」


「いいじゃん。好評なんだから」


カフェの運営に張り切り出したお母さんが、あれこれ考えたあげく、お持ち帰りOKの和食メニューを作って販売し始めたんだ。


これが、近所のひとり暮らしの男性や主婦に大好評で、どんどん売り上げアップ。


現在、カフェの業績は右肩上がりに上昇中だ。


「うちのお母さん、料理上手なのよ。なんたってお姉ちゃんの師匠なんだから」


「でもうちはカフェだぞ。カフェ」


「いいじゃないのよ。細かいわねー」


「先輩がネパールから帰って来たときは、定食屋になってそうだな……」
< 259 / 267 >

この作品をシェア

pagetop