おやすみ、先輩。また明日


でももうちょっと。


もうちょっとだけ、このまま……。




「……そうだ。わたしね、バイトすることになったんだ」


「バイト? なんの」


「えっと……派遣? みたいな。短期のやつ。今年いっぱい」


「そうか。部活はどーすんだ」


「部活は休むこと増えると思う。でも家でお菓子作るから、また食べてね、ヤンキー先輩」


「……ああ。ムリすんなよ」



嘘ついちゃった。

でも言えないんだからしょうがない。



わたしの頭をひとしきり撫でて、ヤンキー先輩は帰っていった。

夜に悪かったなって言って。




「ヤンキー先輩、また明日!」



先輩がいなくなっても煙草の香りの温もりが体に残っていて、切なくなった。

そしてそれらがゆっくり消えていくと、悲しくなった。


わたしはとても欲張りだ。











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