おやすみ、先輩。また明日






放課後。

いつもの水玉のエプロンをつけて、メレンゲとマスカルポーネチーズを混ぜ合わせるわたしの頭の中は、

料理中だというのにヤンキー先輩のことでいっぱいだった。


いつも以上に丁寧に、気持ちを込めて作ろう。



美味しくできますように。

美味しく食べてもらえますように。



できたら目の前で食べてもらいたいなあ。


なんて考えていたわたしの目に飛び込んできたのは、調理室のドアからひょっこりと現れた宇佐美先輩の顔。


危うくボウルを落としそうになった。


わたしの目の前に立つ山中さんは、彼女の後ろのドアから覗きこんでいる宇佐美先輩に気づいていない。

彼女に気づかれないうちに、宇佐美先輩にはドアを閉めてもらわないと。


その時宇佐美先輩と目が合った。

わたしは目線と表情だけでなんとか伝えようとしたんだけど、宇佐美先輩はなぜか嬉しそうにパッと笑顔になって、



「いたいた、杏ちゃーん」



呑気に間延びした声でわたしを呼んでくれた。


ウザいです、宇佐美先輩。

< 51 / 356 >

この作品をシェア

pagetop