強迫性狂愛
呼吸を整えた後、敦子は…


「あなたには、婚約者がいるのよ…?」

「――…わかっています」


敦子は瞳を閉じて


「……2人を傷つけることのないようにね。


私のように――…辛い思いをさせないであげて」


「はい」


その言葉に、敦子は曖昧に笑ってから迅の頬にそっと触れた。


「迅、本当に顔色がよくなった…。それだけで母は安心して行けます」

「気をつけて、今度はどこに?」

「バリのほうへね。…また連絡するわね」

「気をつけて」



――…こうして、年に何回かしか会えない親子の対面は、ものの10分で終わったのだった。

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