強迫性狂愛
「そうだから…抱かれたんでしょう?」


確信を得たかのように私を見つめる紅に、嘘はつくことができなくて


「うん…」


今まで秘めていた想いを打ち明けた。


「黒澤様とはお付き合いをするの?」

「………」

「しないの?」

「それは…」


思わず、言葉を濁した。

だって、それは望んでいた言葉でもあり、望んではいけないと思っていた言葉だったから。


「百花は知らなかったと思うけれど…、黒澤様には婚約者がいらっしゃるの」


紅が悲しそうに眉を顰めた。


「……え」


自分でも驚くほど、間抜けな声だった。

ついさっきまで、僅かでもと、思い描いていた未来が打ち砕かれる。
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