強迫性狂愛
「あぁ、今行く」


そのまま出て行こうとする迅の指を、咄嗟に掴んでいる自分がいた。


「百花…?」

「あ…、行ってらっしゃい」


うまく笑えているか心配になって、思わず自分の頬に手を当てた。

迅は、掴んでいた私の手を優しく握り返してくれて


「すぐ戻る」


そう言って、功さんと扉の向こうへと消えていってしまった。


「あれ、海斗は行かないの?」

「おぉ、話すことは話したし。なんだ?このリンゴの皮」

「あのね、迅がね…」


さっきの一部始終を話すと


「ぶぶっ、ありえねぇ……あいつにそっくり」


そう言って、懐かしそうに目を細めた。


「あいつって?」

「あ?あぁー…こういうのだけは苦手なんだよなって思って」

「…そうだね、私も始めて知ったけど」

「そういえば、迅と柚香婚約正式にしたんだってな。百花、聞いたか?」

「え…?」


一瞬、何を言われたのかわからないくらい、想像もしていなかったのだと思う。

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