饅頭(マントウ)~竜神の贄~
第五章
「あ~あ。良い雰囲気だったのに」

 ぼりぼりと頭を掻きながら、虎邪(フーシェ)がぼやく。

「あと一押しって感じだったのによ。いらねぇこと言いやがって」

「そうかな。返って場を盛り上げたような気もするけど」

 しれっと言う緑柱(リュイジュ)に、虎邪はため息をつき、辺りをざっと見回した。
 目の前には、相変わらず川がごうごうと音を立てて流れている。

 虎邪は川縁に寄って、水面を覗き込んだ。

「ふむ。読みは正しかったようだな」

 水に手を突っ込み、虎邪は何かを掴み出す。
 小指の先程の、宝石だった。

「取りこぼすなんざ、詰めが甘いな。かき集めるまでもないぐらい、生活は潤ってるってことかね」

 ふん、と鼻を鳴らしながら、虎邪は背後の神官の家を見た。
 みすぼらしいあばら屋のくせに、入り口の扉だけは、しっかりしている。
 いかにも中を見られたくないという造りだ。
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