地下世界の謀略






ーーー日常が戻ってくる。

仮住まいで寝て起きてを繰り返し、日々荊という国家機関について嗅ぎ回る日々が始まった。

そして今日も今日とて、理貴さんの教会に2人はお邪魔していた。




「もうここに住むのはどうかな?」


理貴さんの何気ない一言に、2人はお互いに本をめくっていた手を止めた。

ぽかんとした顔の月に吹き出すように理貴さんは笑う。そんな面白い顔をしていただろうか…



「いやだって、君達もう1ヶ月近くここに出入りしているから…なんだか家族が増えたみたいで嬉しくてね」

「か、家族?」

「…何馬鹿なこと言ってんだよ理貴さん」

「いいじゃないか、純粋無垢な姉にワガママ無鉄砲な弟。それに年の離れた琉たちーーー」

「誰がワガママ無鉄砲だっ!」


この会話でキレたのはアルトだけだった。
むしろ私は褒められたんじゃないか、そもそも家族ってちょっと嬉しいかも、と緩んだ頬が締まらない。

隣の部屋で遊ぶ琉や楊、凛子が弟妹だとしたら相当癒されまくるだろう。想像しただけでニヤけてしまう。


「ーーーっ俺はこんな頭緩い姉なんてやだけどな」

「…怒っていいかなそろそろ」


失礼にもほどがある。



「まあ2人とも、落ち着いて。」

「「(話振ったの理貴さんだよな……)」」


「アルマディナの遺跡、何回か調べに行ったんだろう?」

「まあ…何回かは行ったな」


変わらず不思議な雰囲気を出す神殿、そのイメージが頭に残るくらいには調べている。
ヒビの入った石版やコンクリートとはまた違った素材で固められた道、街の面影が残る人が住んでいたかのような四角い家のような建物、そしてどこまで伸びていたかわからない塔のようなもの。

どれも数十年前のアルマディナの暮らしの裕福さを物語っているようだった。



「君達が一度立ち止まりかけたあの石碑の横……地面に隙間があったのは?」

「隙間?」

「そう、隙間。まるで空洞があるように風の流れを感じた」

「地下世界の、更に地下……」

「なんともいえないんだけどね、もう一度確認してみないと」


どの本を調べても、アルマディナについての記述は数多くない。特に地下世界の更に地下なんて、考えてもみなかった。

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