地下世界の謀略






もう限界を迎えかけたその時に、ようやく建物が見えてきたのには本当に救われた。

多少よろけながらも達成感と、そして建物の前に着いたときは驚愕が。



────地下世界にこんな神聖な建物があったなんて、信じられなかった。



「………教、会」

「かなり昔にあったものを改築したんだ」




とはいっても、錆び付いた鉄の十字架が曲がっていたり、建物自体にヒビが入っていたりと様相は綺麗だとは言い難いのだけれど。


鳥のさえずりも聞こえないし緑が生い茂っているわけでもないのに、ここは不思議と引かれるものがある。



「入るぞ」


愕然としていた月に声をかけ、また先へ進むアルト。

月も慌ててそれについていく。





「────兄ちゃん!」


教会の庭から幼い子供の声がした。

歪にそびえ立つ樹木の方を見れば、子供の笑顔が広がっていて、私達に向かって両手を振っている。

当然私が知る筈がないので、事の成り行きを見守るべきだろう。




「───ああ、お前らか。元気にしてたか?」


三人の子供がアルトを囲む。
無邪気にはしゃぐ子供達に、アルトは優しく彼らの頭を撫でていた。


なんとも穏やかな光景に、私の頬も自然と緩んだ。


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