愛シテアゲル


「蜂蜜付けにした苺の紅茶が大好きだったね。小さな時は、僕が作るイチゴミルクが飲みたい飲みたいと大泣きして、琴子さんを困らせていた」
「おじいちゃんがつくるものは、みんな大好きだよ。だから、私……」

 それを継ぎたいの。守りたいの。ずっと私のそばに置いておきたいの。
 そっと囁いた。おこがましくて、胸を張って言えないのが情けないと思いながら。

「うん。僕も小鳥にずっと覚えておいて欲しいから。これから少しずつ教えるね」

 びっくりして、小鳥は顔を上げてしまう。これまで『お祖父ちゃんの味を継ぎたい』とは何度も言ってきたが、まるで子供の戯言だと言わんばかりに笑って流されてきた。

 なのに。今日、お祖父ちゃんが初めて『教える』と言ってくれた!

「これから、月に二回か三回。僕のところにおいで。一緒に夕食を作って食べるんだよ。その時に教えてあげるよ」
「ほ、本当に!?」
「僕もいつまでも元気じゃないよ。わかるよね、小鳥……」

 島に素材を選びに行けなくなった。店も開けられなくなった。その老いを小鳥は見てきた。
 年齢の割にはしっかりしているのは、仕事を続けてきたこともあるだろうし、まだ生き甲斐があるから。それでも思い通りに生きていけなくなった老いはお祖父ちゃんを少しずつ追いつめていく。

 そんな中、小鳥に本気で教えてくれると決断してくれた?




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