愛シテアゲル


「確証がないんです。ないことを社長に安易に告げて混乱させたくありません。まだ自分の中でも『予測』に過ぎず、いまここで言えば、龍星轟の兄さん達にも混乱を招きかねないので。もう少し時間をくださいませんか」

 そう、このお兄さんは、いつもこうして淡々と落ち着いている。
 そして父も、彼が淡々と頭の中で確実になにかを組み立てている時の落ち着きが見えた時、それもまた俺にはない眼で見えたものとしてすんなり受け入れる。
 『たまに生意気に俺に意見するが、言っていることいちいち一理ある』が父の翔に対する口癖だった。
 そして父はそんな彼をとても気に入っている。

「わかった。だが一人で抱え込まれても困る。どんな小さなことでも、アイツをしとめる為の考えに入れておきたい。確証があるにしろないにしろ、三日後には確証がないことでも俺に報告してくれるな」

「わかりました」

 話が終わり、英児父が大人しくなってしまった小鳥を見下ろしていた。

「おめえみたいなチビが敵う男じゃねえわ。そんなのわかっているんだろ。エンゼル、乗せてやれ」

 敵わない父と大人の考えで動いていた彼の間で、なんの役にも立てないことに項垂れた小鳥も力無く頷くだけ。



< 170 / 382 >

この作品をシェア

pagetop