愛シテアゲル
「お祖母ちゃんったら……。翔兄にまでそんなことしていたの」
「そう。匂いが好みというより、お祖母ちゃんのその時の優しさっていうのかな。それを思い出せる匂いだよ。疲れた時はほんとうに使わせてもらっていた。だからきっと、小鳥も知っている匂いだろうからリラックスできるだろうと思って、小鳥がこの部屋に来るようになった日からあの香りを使っている」
そ、そうだったんだ。小鳥は唖然とする。そりゃあ、とっても安心する匂いだったわけだと納得した。そして……。ホッとしてきた。
「やだ、もう……私。やっぱり子供っぽいね。変に勘ぐって……」
「いや。俺も小鳥に甘えていたかな。多くを言わなくても、いつも俺のことわかってくれているもんだから、改めて説明しようだなんてちっとも考えていなかった」
それまで小鳥を大きく包み込んでくれていたお兄ちゃんが、がっくりと項垂れる。小鳥を胸から離し、ソファーの背にもたれ額を抱えていた。
「……甘えてなんかいないよ。でも、やっぱり私、お兄ちゃん達の長い付き合いの関係についていけないよ」
「それはお互い様だろう。俺だって、小鳥の高校時代、大学の若い者同士のつきあいの輪は、小鳥のもの、俺が入っていけるものではないと思っているよ」
小鳥も付き合いが多い。きっとそれは翔以上だと思う。
だけれど、翔は相談も心配もしてはくれるけれど、そんな小鳥の世界に首を突っ込んだり大人ぶった意見を押し付けたりしたことはない。