愛シテアゲル


 エンゼルを事務所前に駐車し、小鳥はすぐに父が待ちかまえている事務所の扉を開ける。

「ただいま。父ちゃん」

 殴られる覚悟で、小鳥は社長デスクの前に立った。
 ひたすら待っていた父親の気持ちで膨らんでいる眼が、小鳥を貫く。
 心臓がドキドキしていた。

「翔と話せたのか」
「う、うん。いろいろ話してきた」

 あれ。翔兄はどうしたとは聞かなかったな……と安堵したけれど、逆にそこを避けられるのもかえって恐ろしい気もした。

 だけれど、英児父はそのまま続ける。

「ランエボの男、どんな男か聞いたのか」

「お兄ちゃんの後輩だったよ。瀬戸田という人。大学のサークルで少しだけ一緒だったんだって。瞳子さんのことがすごく好きだったみたい」

「他になにか聞いたか?」

 男とほぼ一晩一緒にいた娘を待ちかまえたのかと思っていたけれど、英児父はランエボの男のことばかり気にしているようで、小鳥は意外に思いつつも答える。



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