愛シテアゲル

   一緒に暮らそう。(2)



 カフェに入ると、観光客や地元の女性客でわりと混んでいた。

 いちばん奥の窓際のテーブルにその人がいた。
 奥なのに翔がきょろきょろせず迷わずに突き止めたところを見ると、そこが恋人時代の指定席だったようだ。

 そこに物憂げに宵闇に浮かび上がる温泉街を見つめる女性がいた。

 今日、日中は父に呼び出されて赤ちゃんと街中まで出向いて、また夜に元カレと約束して出てきてくれた。でも今度はひとり。赤ちゃんがいない。実家に預けてきたようだった。

 その人を見て、小鳥はちょっと哀しくなる。この前、翔の部屋で感情的になっていたあの気迫が見られない彼女は、とてもくたびれて見えた。

 あの人は独身の時、翔の恋人だった時は、とても清楚で優美で素敵な大人の女性だった。小鳥が到底なれない、とてもすぐには追いつけない。女性として積み重ねてきた色気だってあった。

 なのに……。今日の彼女は見ていられなかった。それなりの服装なのに、独身の時の華やかさはもうない。服じゃない。彼女の生気なんだと女として目の当たりにしてしまう。



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