愛シテアゲル

  お兄ちゃんに限って、そんなこと。(2)



 新たな悩みがひとつ。『指輪、いつつけたらいいの?』
 だって。うちの男共に見られたら、うるさいじゃん!?


 午後、雨が降る。


 会えると思った花梨に会えなかった。学部が違うので、すれ違うと一日会えない日もある。

 彼女に報告したいことも、教えて欲しいこともいっぱいあるのに。学食でも会えなかった。この日は堪え、小鳥はキャンパスを後にする。

 駐車場まで傘なしで走った小鳥は、急いで運転席に乗り込む。

「やだな。今日は雨なんて」

 羽織っていた紺色のジャケットが少し濡れた。袖に龍と星のワッペンが縫いつけてある。父親が経営する車屋の制服。車の運転をするようになると、父親が『俺が手入れする車に乗る娘なら、これを着ろ』と許してくれたものだった。

 このジャケットを羽織って、同じロゴのステッカーを貼り付けた往年の国産スポーツカーを乗り回す『車屋の娘』。それはまたこの女子大ではことさらに目立つようで、小鳥は相変わらず大学生になっても校内では有名人のままだった。




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