愛シテアゲル

  お兄ちゃんに限って、そんなこと。(3)



 やっぱり、嫌な予感がするなあ。

 宮本先輩と別れた後、いつも通りのアルバイトを終え、小鳥は今日も翔のマンションへと向かっていた。
 

 毎日行ったら、鬱陶しいかな? とは思ったものの。『今日も行ってもいいかな』とメールをすると、『遠慮はいらない。いつでもOK』という簡素な返信が届いていた。

 そのお言葉に甘えて、またあの部屋に向かっている。

 でも。あの部屋に行ったら、またお兄ちゃんとああなってこうなって……になっちゃうのかな。小鳥は釈然としない想いを抱えていた。

 複雑だった。お兄ちゃんと裸で寄り添って抱き合って囁きあうのは、とても素敵なことだった。でも、セックスになると……。

 やっぱりまだ怖いのか。上手くいかなくて、また大失敗をするんじゃないかという不安が膨らむばかり。
 

 なのに会いたいから行ってしまう。
 これまでは男共が集合する峠やダム湖で落ち合っていたけれど、周囲に走り屋野郎共が必ずいて、二人きりになれるとは限らなかった。
 

 それにお兄ちゃんに、また花梨ちゃんのこと聞いて欲しい。
 

 宮本先輩のあの様子だと、小鳥が感じているとおりに、近頃の彼女は彼女らしくないのは間違いがないのかも。そう思えてきた。

 ということは。自暴自棄になって、彼女がいる勝部先輩と?
 やっぱりダメだ。その方向に小鳥の心配は向かっていってしまう。

 花梨が本気になりたくても、なればなるほど困ってしまう悩みもまだまだある。




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