もう春は来ない

 キミの容姿を『可愛い』と言った男子は誰もいない。

 僕もそれまでそう思ったことがない。

 少しぽっちゃりとした、運動苦手のキミは、それだけで、お洒落しか興味のないアイツらのイジメの理由になっていた。



「おい、明日、山下に声かけてみようぜ。んで、笑わせて見ようぜ!そしたら……、この笑顔をクラス中に見せつけてやれば、何気にイジメも無くなるかも知れねえしな。つうか、ライバルが増えても困るけどよ」

「まじかよ、少し熱すぎるって!」


――そんな、うまくいくかよ。


 そう思いながらも、僕は少し心が踊っていた。

 コイツなら、なんとかしてくれんじゃないかと思っていた。


 だって、


 キミがそこで、あまりにも楽しそうに、サクラの花びらと舞っていたから。

 キミを、ひと目で好きになったから。

 春が、大好きになりそうだったから。




 ホントに、好きになったから。









 ホントにホントに好きになったのに。



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