女王の密戯
妖艶な女王の私生活
「それにしても寒いですよね」

一通りの聴取を終えた夜、由依が手に息を吐きかけながら呟いた。女という生き物はどうも男より寒さに弱い気がする。

「どう思った?」

「何がですか?」

茶田の質問に由依が首を傾げた。パーマをかけられた髪はふんわりとしているようでその実硬いのか揺れることはない。

「米澤紅華」

茶田はその名前だけを口にした。

「やっぱり綺麗ですよね。流石というか、間近で見ても欠点一つ見付けられないんですもん。顔も肌も綺麗だし、スタイルもいいし、あたしみたいなちんちくりんから見たら羨ましい以外、言葉がないです」

ちんちくりんとはいい得て妙だと思い、茶田は笑い出したいのをどうにか堪えた。由依はそれには気付かないらしくうっとりとした表情を浮かべている。

「完璧、だと思ったか?」

茶田の質問に由依は即答はしなかった。

「そうですね。言われれば完璧ですね。完璧に保たれていると思いました」

由依は一人で自分の言葉に納得するように頷いた。そしてその後、でも、と続けた。

「中身は綺麗な感じじゃないですよね。あ、こんなこと言ったら美人へのやっかみみたいですけど」

確かにそうとる人間もいるだろう。しかし、由依はそんなことを言う女ではない。なのでその言葉は本心から感じたものなのだろう。

完璧に保たれている。
その言葉が茶田の頭の中に回った。
そしてその言葉は妙にしっくりときたのだ。


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