瞳の向こうへ
『……ごめんなさい』

『先輩にもしものことがあったら俺嫌なんですよ!大切な人なんですよ!』

……私、翔君に告白されてるの?

……ああ、ダメ。抱きしめられた余韻が私を引きずっててボケーっと突っ立ってるだけ。

『あのー、急に用事かできたので早く帰ります。気を付けて。さよなら』

私を置いてそそくさと帰っちゃった。

彼の姿が見えなくなるまで棒立ち。

右手首に血がにじんでたけど、今はケガなんかどうでもいい。

このドキドキ感はなによ。

年下の子だよ?

私、翔君を意識してるってこと?

急いで帰りたい気持ちはあったけど、この場を離れたくない女心がなかなかそうさせてくれなかった。

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