瞳の向こうへ
翔君とのにらみ合いはしばらく続いた。

誰かが口走った瞬間、手をだしてしまう。

こんな感情的になるとは……。

甲子園での夢のようなひとときって今日でした?

「お〜!誰かと思ったら葵かよ」

「…あ!源先生。お疲れ様でした!」

朝と一緒な人?

グラサンにアロハシャツですよ。

いかついオジサマ姿の源先生を目の当たりにしたら急に何も気力がなくなりました。

「サービスか。川崎先生もやるねえ。翔にこれからミーティングって伝えておいてくれ。わざわざ激励ありがとう」

嬉しいことでもあったのか、意気揚々と二階へと。

『帰るし。これからミーティングだそうです。試合頑張ってね』

一方的に伝えて逃げるように宿舎を出た。

しばらく顔見ないからスッキリする。

加奈子ちゃんの光をとんでもない方向へ照らしてしまったよ。

ショックと怒りで帰りの新幹線は寝られなかった。

これで初戦敗退でも所詮彼はそこまでの男。

通りすぎてく景色をみつめながら怖いくらい開き直っていた。

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