神隠しの杜
「走れ!!!」

「え?」

「石段を一気に駆け上がって、社へ急げ! 神隠しに捕まったら最後、歩を救えなくなるぞ」

「わ、わかった」

 一気にまくし立てられ、何が何だか理由《わけ》がわからない。

 それでも行くしかない。友達を救うために。

 そのために、ここまで来たのだ。

 明かりもない道を全力で走る。見えてきた隠れ神社の石段をひたすら登り続けるが、まだ、先は見えない。


 こんな時だからこそ思う。運動部にでも所属すればよかったとか、普段からアウトドアな遊びをすればよかった……とか。

 

 何度も足を取られそうになりながらも必死に登る。大体神隠し自体目に見えるものではなく、見えない何かに追われるのは精神的にきつい。


 それを紛らわすために真冬に話しかける。



「ふ、ふゆ……ここ何段あるんだっけ?」

「600段」

「嘘だろ……誰だよ作ったの! こんなに階段いらねぇだろ? じぃちゃんばあちゃんはどうすんだよ!?」

「隼キレてるね」

「これがキレられるずにいられるかよ!」

 

 隼政はいよいよ限界だと思った瞬間、真冬が後ろを振り返り何かを呟いた。



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