神隠しの杜
熊野明日香は机に両肘をつきこっちを楽しそうに見ている。



「俺の顔になんかついてる?」

「ううん、神隠しに取り込まれなくてよかったなって」

「…………神隠し?」

「近い言い方をするなら、迷いの森かなあ。迷いの森も足を踏み入れて迷ったら最後でしょ?あめちゃんも、踏み入れる手前だったんだよぉ」

「神隠しは浸透してるのか……!?」



雨芭が叫んだと同時に料理を運んできた黄昏が口を挟む。



「浸透も何も――隠れの町自体が神隠しの根源ですから、神隠しから逃れるために名をつけても、逃げられないし終わるわけないんですけどね」



雨芭は言葉を発する事ができなかった。






「僕がお話しましょう、僕が知る真実を」






その時黄昏鏡真は一体何を思い、そう口にしたのだろう。






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