もう一度

もう一度

海斗と話そう、と決心した時に限ってどうして

「こんなに忙しいのよ」

むっと唇を横に引き結んだしるふに

「珍しいじゃない。しるふが忙しいことを気にするなんて」

向かい側で昼食を食べていた飯田が、反応する

「だって、善は急げって言うじゃない」

せっかく決心ついたのに

しるふの突く日替わりランチメニューは、湯気の立つサバの味噌煮定食だ

「黒崎先生には、ちょっとお話があります、なんてこと言ってるの」

対する飯田は、カツ丼だ

「まあ、時間取れる時教えてくださいっては言ってあるけど」

その後から言われなくてもわかるほど忙しくなってしまった

部屋に帰るのは日をまたいでから

もしくは諦めて仮眠室にもぐりこむに日々だ

朝起きても海斗の姿が隣にあることは、ない

「どうしろっていうのさ」

もう、とほほを膨らませるしるふの、その理由に飯田は微笑んだ
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