もう一度
「頑張ってね」

そう言ってしるふの横を通りずぎる芳川の背を呼び止める

振り返った瞳を真正面から見据えて

「でも、もっと近づいてみせますよ」

最高よりも上に

彼の背中を追い続けて、追い付いてみせる

絶対に

「楽しみにしてるわ」

いつか彼女の名を、黒崎海斗のお気に入りという名を

アメリカで聞くことを

踵を返した芳川の背が扉の向こうに消えていく

それを見送って、ふと視線を向けた窓の外は、

秋らしいすっきりとした青空が広がっている

「…秋も、いいもんかな」

へへ、と笑ってロッカールームを出る

「黒崎先生、小児科行きましょ!!」

静かに時間の刻まれる医局に、彼女のはつらつとした声が響いた
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