もう一度
「本当、女心がわかってない」

むすっと頬杖をついたしるふの口から漏れる不満

「いいじゃない。女心が手に取るようにわかってる男なんて、過去泥沼よ」

「だけどさー」

不満たらたらのしるふに、

「いいじゃない。あんなに想われてるんだもん。少しくらい期待に沿ってくれなくてもさ」

眠りこけたしるふを迎えに来た海斗のあの言葉を思い出しつつ、

飯田は微笑みかけた

「なんか莉彩海斗寄りになってない?」

あんなに嫌ってたのに

「あら、嫌ね。私だって認識を改めるのよ」

目の前の患者も、仕事場という場所も、あの時の彼には関係なかった

しるふ、と呼んだ海斗の声を聞いた時に

あるいは、居酒屋で眠りこける彼女に向けた瞳を見た時に

ああ、この人は、他の誰にも興味なんてないんだと理解した

大切に想っていなければ、あんな優しい瞳は向けられない

ましてや下の名前で呼ぶほど焦りはしない

だから

ずっとずっと寄り添っていて欲しい
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