文字降ル空【BL/短編】

「お前のこと、本気で好きだった」
「…うん。気をつけてな」
「今でも好きだ。たぶん、この先、ずっと」




 振り切るように出て行ったあの体温も、背も、あの言葉も。忘れられない。

 風の便りでヤのつく男に気に入られたのを知ってから、俺の中はあいつへの心配ばかりだ。


 友人からもらった薬を、また1つ、食べる。


 窓の向こう。車はワイパーを動かし、通行人は傘をさしている。


『今でも好きだ。たぶん、この先、ずっと』



ガラス越しに見上げた空からは、その文字が。

バラバラと絶え間無く。

俺目掛けて、降ってくる。



 あの声はもう忘れてしまった。再生できるのは、体温だけだ。

 だから だろうか。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop