Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「性急に推し進める政治改革に不満を漏らす者が、多くいます。それに、国王陛下がこれまでに追放した貴族が数多く存在するのも、事実です」

「知っているわ。ジェイムズの命令に忠実な、身分の低い者たちばかりを政府の役人にしている」

(レティアと出会って、人を疑う心を知ったのね)

 ジェイムズに愛されるだけでは、レティアは物足りなくなったのだろう。

 愛人と認められず、ジェイムズの子を産んだレティアはきっと悔しかっただろう。ジェイムズやジョーンを恨んだだろう。

 待っているだけでは、ジェイムズの隣を堂々と歩けない。

 力で王妃の座をジョーンから奪わなければ、この先ずっと影の愛人のまま、ジェイムズの気まぐれで抱かれるだけになる。

 ジョーンを殺し、空いた席にレティアが居座らなければ、ジョーンには勝てない。そんな風に考えて、ジョーンの命を狙ったに違いない。

 レティアの殺人計画を知ったジェイムズは、ある程度教育の受けた貴族を恐れるようになったのだろう。心の裏に潜む欲望が怖くなった。

 ジェイムズのまわりにいる貴族が、何を考えているのか全然わからなくなってしまい、怖くなったのだろう。

 ジョーンにも何を考えているのか、何を思っているのか、聞き出そうする節があった。

 イングランドで過ごした自由気儘な生活とは違うと気がついたのだろう。
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