あの頃より きっと。
雷はそう言って彩穂を離すと、目線を合わせるようにして彩穂を覗き込んだ。

大きな雷の瞳がまっすぐに彩穂を見つめ、暗くなった夜の街中の音はどこかへ去った気がした。

彩穂は、問いたいことの何一つも口にすることができず、ただ黙って雷を見つめた。





「俺、お前が好きだから」





その時やっと、彩穂は身動きを取ることができた。


驚きのあまり、口元を手で覆ってしまう。
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