ひきだしから、男子!
レジの内側で本を
読んでいた初老の男
性が、眼鏡をかけた
目をあげた。
小さく振れているス
イングドアを見て、
狐につままれたよう
な顔になる。ドアの
前に立っている牡丹
達の姿は、彼の瞳に
は映っていない。
「すごい」
呟いた彼女の声も、
聞こえないらしい。
店内は二十五メー
トルプールくらいの
広さだ。レジと平行
にドミノ倒しのよう
に並んだ棚に、びっ
しりと書籍が納まっ
ている。