Hurly-Burly 4【完】

その次の日、相変わらず看護師を口説きに行く

伊織は病室には寄らず、千治が久しぶりに顔を出した。

「元気にしてたか?」

「はい、坊ちゃんも元気そうで。」

「包帯取れたんじゃなかったのか?」

「そうなんすっけど、坊ちゃんには見せられない

醜態なんで勘弁して下さい。」

千治の眉がピクリと動いた。

「坊ちゃんじゃない。」

「へい?」

「お前、いつもそう呼ぶから気に食わない。」

「すいやせん。」

「ビクビクしてんな。俺の方がチビな癖に

弱腰じゃ親父に笑われるぞ。」

小学生の癖に生意気だとは思わなかった。

稜さんの息子だって馬鹿にしてた。

千治は仏頂面をしていた。

「じゃあ、何て呼べばいいんすか?」

「千治・・・」

呼び捨てにするのはマズイんじゃないかとも

思ったが、早くそう言えよって期待の目を

向けられて控えめに千治と呼んだら眉を下げて

笑みを浮かべた。

「矢部、お前も家族だから遠慮するな。

俺は遠慮しねぇからな。」

差し伸べられた手は出会った時と同じで

小さい癖に温かかった。

「はいっす・・・」

泣きそうだった、こんな子どもに泣かされる

なんて思いもしなかった。

「だから、付けるか付けないかは自分で決めろ。」

左手を前に出す千治の手には包装紙に包まれた

小さな箱があった。

「これ?」

「退院祝いだ。」

「開けていいっすか?」

「好きにしろ。」

リボンに包まれ、包装紙に包まれた箱を

丁寧に開けていくとそこにはメガネケース

に入った黒いサングラスが入っていた。

小学生にしてはいい趣味してんなとかそんな

ことよりも俺の目の傷を知って買ったんだろうって

ことに驚かされて泣いた。

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