曖昧ショコラ【短】
「先生だって……あたしみたいな人間より……」


「ふざけんな」


震えそうになる声で話すあたしを遮ったのは、唸るように低い篠原の声。


聞いた事が無いその声音に体がビクリと強張った直後に腕を引っ張られ、そのまま引きずられるようにして書斎から出された。


「せっ……!」


「うるせぇ」


一言であたしを黙らせた篠原は、リビングに入るとテーブルに置いてあった箱を掴み、あたしを黒いレザーソファーに押した。


正式には“投げた”と表現する方が正しいのでは無いかと思う程の勢いに驚き、彼があたしの上にいる事に気付くのが僅かに遅れてしまった。


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