ボクの震動、キミの鳴動。
腐る








「付き合ったり、別れたり、より戻したり、ホント忙しいカップルだよねー」





今日も病室にやって来た瞬に昨日の報告をすると、瞬が呆れた様に笑った。






「ホントだよね。 何このスピード感。 この調子でいくと来週には結婚して離婚してそう」





そして何故か『シゴトが忙しくてお見舞いに来れない』ハズの加奈子もいる。





コイツは、シゴトが忙しいワケじゃねぇな。






お見舞いに来るのが面倒だっただけだな。 ・・・・・薄々気付いてたけど。





「・・・・・で、そろそろコレが必要かと思って持ってきたげたよ。 あげるー」






そう言いながら、瞬が袋からダンベルを取り出した。






「・・・・・何。 彼女が出来た途端に鍛えるって・・・・何」






加奈子が若干気持ち悪そうにオレらを見た。






「トモと千夏ちゃんが気持ちイイセックスが出来る様にです」






瞬が爽やかに答える。





瞬が言うと『セックス』さえ爽やかに聞こえるのは何故だろう。






「・・・・・と、言うと??」





ほらね。 加奈子もなんの違和感も感じなかったから普通に聞き返す。





オレが同じ事言ったら、どうせ汚いもの見る様な視線送ってきただろうのに。





瞬が『騎上位を腕の力でアシストする為です』と白い歯を見せながら言えば






『そっかー。 なるほどねー』などと頷く加奈子。






これこそオレが言ってたならば、汚いものを見る視線ではなく『気持ち悪いんだよ』という辛辣な言葉を飛ばされていたに違いない。







片足がなくとも、瞬は得な人生を送っていると思う。
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