ぬくもりをもう一度
しかしそんな俺の焦りなど、

どうやら無用だったようだった。


ふと視線を合わせた

香澄の顔はとても穏やかで、

あの頃と同じように

ふわり優しい笑顔で

俺を見つめ返してくれたから。


その顔にすっかり安心した俺は、

繋いだ手をそのままに

ここまで歩いてきた。


そして俺たちは今、

圧迫感を感じる小さな空間に

一緒にいる。


唯一、あの頃と違うこと。





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