冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
「夕綺…さん…ヒック、ぅく…夕綺さん」
情けないくらいの溢れる涙で、
情けないくらいの弱い心で、
声さえもうまく出なくなっていく。
よぎる紘夜の背中を
よぎる甘い煙草の香りを
消し去るように、
「夕綺さんっ、夕綺さん、目あけて!」
「…はっ、ぁ…」
怖くて、
怖くて、
泣きながら夕綺さんの名を呼び続けた。
夕綺さんを、助けて。
誰か、
誰か、
たすけて。
紘夜を
助けて
タスケテ