冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
「君はもとの生活に戻るんだ」
何も見えない世界に、
吉水さんの声が、響く。
「全部忘れて、準君と家に戻るんだ」
全部、忘れて?
戻る?
「きっと、紘もそれを望んでいる」
その言葉とともに、
吉水さんは私がしがみついていたジャケットを、
するりと持ち上げた。
「今タクシーを止めるから、準君と帰るんだ。
いいね。頼んだよ、準君」
「はい」
地面に縛り付けられた様に重い私の体を、
ジュン兄が起こして支えてくれた。
でも、
私の視線は動かない。