玄太、故郷へ帰る



ドッタドッタドッタ……


「な、なんだ! 玄太! おめえ……」


続いて廊下に響くのは、父の重々しい足音。


……玄太?
玄太が?

私もカップを置いて、慌てて部屋を出る。


「あっ、姉ちゃんもいたんか!」


階段を駆け下り、息を切らす私に向けられた笑顔は、弟の玄太の……まさにそれだった。

玄関に立ち尽くす母。
その後ろで僅かに震えている父。
玄関に立って、大きな荷物を背負っている……弟の玄太。


「あ、こっち、こっち。紹介するから」


そう言って振り返る玄太の視線の先には……


「……はじめまして。石神弥生です」


にっこりと、息を白くして笑う女の子。
年は、玄太と同じくらいか、もっと若いだろうか。

肩に降りた雪を、丁寧に指で払う。
まだ、その仕草も幼い。

そして……


「あんた、その子……お腹……」


そう言う母の声は上擦っている。

当然だ。
玄太の後ろで微笑んでいる幼い彼女は、突き出した大きなお腹を大事そうに抱えているではないか。


「ああ、うん。母ちゃんと父ちゃんの孫だよ」


あっけらかんと、玄太はそんな事を言うのだから……驚く。



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