碧い月夜の夢
「でも良かったね。あの世界が、ちゃんと前に進む事が出来て…」



 あの日、悠も凛々子の夢を見たらしい。

 だがサヤカと違って、悠はその一回だけで、凛々子とレオン、そしてテルラの世界の事を大分理解しているみたいだった。



「でも何であそこで、皆が夢の中まで迎えに来てくれたのかなぁ…」



 もう、悠には何も隠すことはない。

 凛々子が言うと、悠は笑って。



「心が、繋がってたんじゃないかな。俺は、そんな気がしてならないけど」

「あの…悠さん」



 凛々子は、どうしてももう1つだけ、悠に聞きたい事があった。

 何? と、悠は凛々子の隣の椅子に座る。



「あたし…また、会えますか…?」



 あれから凛々子は、1回もテルラの夢を見ていない。

 頭痛もすっかり無くなっている。

 そんな凛々子から視線を逸らすと、悠は目の前の海を眺めた。



「そうだね…可能性は、限りなくゼロに近いかなーーでも、ゼロじゃない」

「………」

「夢の世界は、凛々子ちゃんの心のなかにあるんだよ。だからね、その必要があればいつかまた、きっと彼に会えると思う」

「……はい」



 夢と、現実。

 それはいつも、絶妙なバランスで繋がっているものだ。

 だからあんなに、素敵な体験が出来た。

 最後に、レオンを見上げた時。

 両方のほっぺたを、包み込むようにして持ち上げられて。



“俺も、凛々子のこと――”



 だんだん近付いてくる、レオンの綺麗な顔立ち。

 唇が触れた瞬間、凛々子の身体がふわりと浮き上がって。



「恋してたんだ、凛々子ちゃん」



 少しからかうように、悠は言った。

 真っ赤になった顔を隠すように、凛々子は両手を顔に当てる。

 その時、サヤカが戻ってきた。



「ねぇ、凛々子。友達が前の海岸でバーベキューしてるってさ。あのね、中学の時の友達なんだけど…誘われちゃった」

「いいよ、一緒に行こうよ」



 思ったより速答した凛々子に、サヤカは笑顔を向ける。



「桜井浩司もいるってさ。いこ、凛々子!」



 うん、と頷いて、凛々子は立ち上がる。

 楽しんでおいで、と言う悠に、頭を下げて。



「ありがとう悠さん、また来ます」

「うん、いつでも待ってるよ」



 そう言いながら、悠は手を振って凛々子達を見送った。
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