AZZURRI~AZZURRO番外編~
雪乃を迎えるために雪乃の愛馬の準備をしていると
マリモがポールにすり寄ってきた

マリモはもはや立派な大人の獅子であるため
宮から連れて出る事は出来ない


もちろん定期的に山へ連れて行って放してはやるが
やはり、雪乃が出かけるときはいつも寂しそうに
護衛のポールやゴルチェに甘えていた


「すまないな。
いつも寂しい思いをさせてしまう。」


グルグルと喉を鳴らすマリモの頭をわしわしと撫でてやると
ふと昔の事を思い出す


あれは…カイルに戻ってから久しぶりの見周りの日だったな

カイルの城壁周辺を見回っていると
茂みの奥から動物の鳴き声が聞こえた

獣も多いことから警戒して鳴き声の方に進むと

小さな…と言っても普通の猫よりは大きいが
獅子の子供が震えながら丸まっていた


その横には母親と思われる獅子が横たわっていたが
その柔らかな腹毛は血に染まり
瞳は瞳孔が開いたままだった


野生動物の死は良くあることだ


ポールは特に気に病むつもりはなかったが
震えている子獅子が気になった

このまま放っておいても死ぬだろう
しかし…毛皮は売れるし牙は良い武器になるか…?

そう思ったポールは適当な麻袋を見つけると
母の傍を離れずに震えている子獅子を袋に放り込んだ


本当なら
そのまま皮をはいでしまう予定だった


だが
ポールは宮に戻って

黒髪の美しい姫に目が止まってしまった
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