聖†少女
聖†少女
−ジングルベル ジングルベル−
明るい曲が流れるアーケード、煌びやかな装飾品の溢れるお店。
「メリークリスマス」
笑顔で風船を渡す白いおひげのお爺さん…
……こんなの、クリスマスじゃない。
「クリスマス」、というものは本来、聖なる独り子イェス・キリストさまがお生まれになったことを祝う日だ。
私は憂鬱な気分で誰のためかわからない装飾品を眺めた。
「…」
その意味のない装飾品を見る度、壊したい衝動に駆られる。
(だめ、そんなことしちゃ…)
くっ、と唇を噛みしめ不快な場所から離れようと歩を進める。
「…お母様…」
今は一刻も早く自宅に帰らなければならないのだ。
(なぜ、どうして…?)
賑やかな音楽の流れる商店街を早足で進む中、頭を巡るのはそんなことだった。