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親友と大学の図書館で課題レポートを作成中。

課題内容は『あっと驚く英文』

俺らは英文学専攻翻訳コース3年。

一応、翻訳家の卵と言われている。

与えられた文章を訳すだけが勉強では無く、

奥行きのある考え方から多彩な表現を身につける事が基本である。

ゆえにレポート課題は常に豊かな表現力を必要とし、

俺らは毎回頭を悩ませている。


「おい、何か浮かんだか?」

「いや、全く」


俺は埒があかず、医学書をパラパラ捲り始めた。

医学書は知り得ない事柄や知識の宝庫だからだ。

俺が2冊目に手を掛けた瞬間!!


「出来た!!」


親友がシーンと静まり返る図書館に響き渡る程の大声を上げた。


「本当か?」

「あぁ、完璧だ!」


彼は真っ白なルーズリーフにたった1行書き込んだものを俺に差し出した。

『 My girlfriend is my mother. 』


「はっ!?」

「どうだ!!」


意気揚々と不敵に微笑む親友。


「ん?これのどこが?ってかこの文、可笑しいだろ」

「フフッ、いいんだよコレで!」

「はぁ?…やっぱり可笑しいぞ、この文」

「どこが?」

「“俺の彼女は俺の母親だ”だろ?」

「ブッブー」


小馬鹿にした感じに笑う親友。

けれど、何度見返しても可笑しい。

英文学専攻の中でもエリート集団の翻訳コースだぞ?

コイツ、こんなに馬鹿だったか?

俺が呆れ顔でいると、


「降参?」

「うん、そう……だな」


俺は軽く頷き答えると、


「直訳するとお前ので合ってるが“俺の母”を言い変えると“我が母”で更に変化させると“我がママ”。要するに“俺の彼女はワガママだ”になる」

「おぉ~~っ!!ってか、コレ駄洒落じゃねぇか!」

「いいんだよ、駄洒落で。“あっと驚く英文”だろ?」

「あっ……なるほどな」

「コレで完璧だろ?」

「そうだな…フッ、よくやった!お陰で今日は早く帰れそうだ」


2人1組の課題レポート。

こんなたった1行の英文を見た教授のあっと驚く顔が目に浮かぶ。

これも豊かな表現力ってヤツか?


 ~FIN~


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